この年の7月、Yahoo! JapanとGoogleとの提携が発表された。
本提携は簡単に言うと以下の二点になる。
1. Yahoo! Japanの検索エンジンがGoogleから提供されるもの(をベースとしたもの)になる。
→ユーザーに対する変更。これによりYahoo!のウェブ検索結果がほぼGoogleと同じになる。
2010年11月より実施された(発表当初は開始時期の具体的言及はない)
2. Yahoo ! Japanの検索結果に掲載するための広告配信システムがGoogleから提供されるもの(をベースとしたもの)になる
→広告主に対する変更。広告主が購入したYahoo! Japanの検索連動型広告のバックエンドはGoogleが提供したものに変更になる。
2011年11月より実施された(発表当初は開始時期の具体的言及はない)
*上記2について大雑把に例えると、セブンイレブンでプライベートブランドとして売っているカップ麺が、実は日清製のカップヌードルだった、というような話で、ここではセブンイレブンがYahoo! Japan、プライベートブランドのカップ麺がYahoo!が販売する検索連動型広告、日清がGoogleの役割となる。
参考までに言うと、以前本ブログに記した2002年から2004年におけるYahoo!JapanとGoogleとの提携と今回の内容は異なる。
(この当時は、Google AdWordsを購入すれば、Yahoo!にもGoogleにも掲載されますよ、という提携内容であった)
私個人にとって、今回のYahoo!Japanとの提携は、2003年に自分がGoogleで働きたいと思った動機、そしてその後約7年間、一貫して自らの仕事の動機づけとしてきた "Yahoo! Japanの二番手である現状を打破したい"というテーマの終りを意味した。
もはや、ビジネス上の仕組みとして、"Yahoo! Japanを追い越そう" と言う必要がなくなったのだ。
今回の提携(広告主に対する変更となる上記2)により、Googleが日本で二番手のままであっても、提携先であるナンバーワンのYahoo! Japanの広告が売れれば 、その売上の一部もGoogleの収益になるのである。
つまり、Yahoo! JapanからGoogleが受け取る業務委託費の限界利益率 の方が、Google自らの営業活動による売上の限界利益率よりも高ければ、Yahoo! Japanの売上を増やした方がGoogleの利益にとってはプラスになる、ということも起こり得る仕組みなのである。
このYahoo! Japanとの提携にゴーサインを出したのは、CEO(当時)のエリック・シュミットであるが、もし自分が彼であったら同じ決断をするだろうか?ということが頭をめぐった。
ビジネス的には幾つかの選択肢の中のひとつであり、そのこと自体決して間違った選択ではないと思う。実に良くできた仕組みであるし、経営者としては保険をかける(Google JapanがだめでもYahoo!がある)のは当然のことであるから、それに異を唱えるわけではない。
数年先を見据えれば、ここで検索連動型広告におけるGoogle単独での市場拡大に見切りをつけ、来るべき他の市場(Facebookに代表されるソーシャルマーケティング市場)での競争に注力する体制を整える、という思惑もあったのかもしれない。それは十分に理解できることである。
ただ、私個人にとっては、"The game is over." というサインであり、この提携が実際に開始された時は自分が新たな道を進む時だということを心に決めた。
この想いは、2000年からインターネットビジネス、広告営業に携わってきた自分の私的なものであり、ここで記したようなことは、当時のチームメンバーの前で口にしたことは一切ない。
自分の仕事歴に基づいた私的な想いを、Googleの営業の最前線に立つ面々に押し付けるような真似は一切したくなかったからである。
この提携は、ここ数年で日本のSearch Engine Marketing市場に最大のビジネスインパクトを与えるニュースと言える。
それほどまでに日本市場に大きなインパクトを与える提携でありながら、その合意までの経過全てがアメリカ本社主導で行われ、当事者となるべきGoogle Japanが主体的に関わっていないということも、新たな道を進もうという決断を後押しする材料のひとつであった。
2010年の参考情報
日本のインターネット広告費
7,747億円 (対前年比+10%)
*出典:電通「日本の広告費」
Google 年間売上高 (全世界の売上)
29,321百万ドル(対前年比+24%)
主なニュース
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