2012年3月15日木曜日

2007年 - 直接営業の大切さ


2006年はとにかく忙しい年だった、と書いたが、2007年からはGoogle Japanの人材採用がそれまでにはないスピードで進み、営業に携わる社員も増えてきた。
今まで記したように、当時のGoogle Japanでは、一部の広告代理店にフォーカスして、積極的な営業活動を試みていたので、新たな人員の多くはその業務にアサインされることになった。
当時の日本は、様々な点において、アメリカを中心とした他国のGoogleでの営業活動とは異なるやり方をとっていた。
そういうことが可能な時代であった、ということである。
 
この年の主な仕事は、大手広告主数社に対して直接的な窓口となり、AdWordsの継続的な利用を促進するというものであった。
その活動の規模や会社としてのバックアップについてはともかく、自分としては広告主との直接のコミュニケーション、関係構築の必要性を従来より強く意識しており、可及的速やかに取り組むべきだと考えていたので、この年の新たな仕事には、小さな一歩とはいえ、使命感のようなものを感じていた。
なぜ、自分は広告主との直接取引や関係構築、顔の見える営業活動を行うことが可及的速やかに必要だと思っていたのか?
当時のGoogleがおかれていた状況や、自分個人としての考え方を幾つかあげることもできるが、その最大の理由は、多くの広告主が、自分が何に投資をしているのか十分に分かっていない状況を目の当たりにしたからということである。

通常、広告主がインターネット広告にお金を使うときには、その使った費用に対してリターンを求めるものである。例えば、1か月に50万円の広告費を使って、そこから100万円の売上があがることを目標にする、といった類のことである。
そのリターンを得るための手段として、Yahoo!Japan、Google、その他の手法を組み合わせて使う。
個人投資の例であてはめると、広告主は投資信託の購入者であり、投資信託の中身をあけると、Yahoo!JapanGoogleといった個別銘柄がポートフォリオに組み込まれているといったようなものである。
インターネット広告への投資に際しては、多くの場合、広告代理店が運用会社としての役割を果たしており、日々目標とする運用成績(広告投資対効果)を残すために、個別銘柄の情報を収集し、その売買等を行っている。

当時、自分が思っていたことは、広告主の投資活動における最大のリスクというのは、設定した運用目標に達しないことではなくて、多くの広告主が自分が何に投資をしているのかが分かっていないということであった。
それは、Yahoo Japan !にいくら、Googleにいくら使っているのかが分かっていない、という大まかなお金の使いみちのことを言っているのではない。
何に投資をしているのかが分かっていない、というのは、運用成績を左右する個別銘柄の情報を理解していない、ということである。

投資をしている中身について、例えばGoogle AdWordsの製品特徴、使い方のノウハウといったことを、投資家である広告主自身が良く理解できておらず、運用成績の結果でしか物事を判断できない、 ということである。
この年はリーマンショックが起こる前であるが、例えて言うなら、資産運用は運用会社まかせで、サブプライムローンのような商品を自分のポートフォリオに入っていることすら知らなかった という状況と似ている。
その産物として、広告主による運用目標の数値(:Cost Per Acquisition)だけによる運用会社(代理店)の評価とリプレース、代理店による運用目標の数値を改善するためだけの値引き販売というドーピングが横行する。
しかしそれは、Google自身が運用会社である広告代理店に対してのみ営業活動を行ってきた、pros and  cons consが生み出した結果であることも、また事実なのであり、Google Japanの一員として自分も責任を感じていた。

当時、自分は、このスパイラルに一石を投じて、広告主のより良い投資サイクルをつくるために、それまでのGoogleとしての営業方法、代理店のみに対する営業活動を軌道修正するタイミングだと考えていた。
自分としては、Googleという個別銘柄のIR活動にもっと積極的に取組みたいという焦りがピークに達していた頃であった。
そんな中、自分が出来たことは、担当する一部の広告主に対してのみ、Googleという個別銘柄の情報をインプットして、ノウハウを身につけていただくためのお手伝いをする活動するだけであった。
小さい波でも自分が出来ることをやるしかないのである。
そして、この活動を会社である程度の規模感で実施できるようになったのは、2008年以降になる。



 

0 コメント: