もうひとつ印象に残っているのは、YouTubeの日本での広告商品化、販売活動に携わったことである。
AdSenseの掲載先としてのYouTubeへの広告掲載ではなく、YouTubeだけに掲載される広告商品、トップページへの広告やブランドチャネルと言われるページへ掲載される商品をアメリカのYouTubeと連携しながら日本で製品化することを目指し、年末に販売活動を開始した。
この製品化プロジェクトは、数名のメンバーから構成され、自分は主に顧客からの受注フロー、アメリカ本社のYouTubeチームと連携して入稿から掲載までのオペレーションを確立することをミッションとし、ローンチまでの期間限定ということで携わった。
YouTubeはこの前年にGoogleが$16.5Mで買収し、その買収当時の年間売上が1,500万ドルという事実で話題になったように、収入基盤は強固なものとは言えなかった。
お金儲けを全く考えていないと言っても過言ではないくらい、とにかくユーザーに支持されるためのサービス構築に徹していたと言える。
日本での広告商品販売開始プロジェクトに際して、二度ほどアメリカのサンブルーノにあるYouTubeオフィスへ行き、計二週間、アメリカの営業現場でオペレーションを身につけるために滞在した。
そこで知らされた事業収支の赤字具合には驚いたものである。
また予想していたことではあるが、何よりも広告掲載までの仕組みの古臭ささにも改めて驚いた。
前述したように、自分がGoogleで働きたいと思った最大の理由は、AdWordsという製品が持っている革新性に強く惹かれ、それが日本の広告市場に大きなインパクトをもたらすことを確信し、そのチャレンジを自分自身で行ってみたかったからである。
その革新性とは、
(AdWords)
・予算に応じて広告掲載ができる!
・Webサイトとクレジットカードがあれば、24時間いつでも誰でも購入可能!
・広告主が直接、掲載条件を管理できる!
といった、従来の広告商品にはない特徴であった。
しかし、この時取り組もうとしていたYouTubeの広告というのは、この3つとは正反対の製品、つまり、
(YouTube)
・固定価格での広告掲載
・注文書によるやりとり
・媒体側だけが広告を設定できる
という、AdWordsが起こしたパラダイムシフトと全く逆行するような広告商品であったのである。
しかも、広告の掲載設定に際しては、アメリカ本社のGoogleコンプライアンスチームの承認を得てから、サンブルーノのYouTubeチームに広告設定を依頼するといったように、ステークホルダーが多く、国境、時差のある中で、彼らと共にミスのないようなフローを確立しなくてはいけなかった。
自分としては、この時点でのYouTube広告商品のアドバンテージは、”日本で初めて”という以外、特に売り文句になるものはないように思っていたが、このように国を超えて関係者の多いオペレー ションのフローを最初から最後まで確立する、という点においては、このプロジェクトの意義を感じ、自らの仕事に取り組んていた。
受注活動は、このようなはじめての取り組みだから何が起きるのかも分からない、、という点を理解してくださる広告主に限定して行い、結果として東芝とリクルートの2社にお試しいただくことになった。
掲載開始の当日、最後までアメリカYouTubeチームとのやりとりが続き、開始予定時間の直前で
緑信号が点灯する(掲載開始の社内シグナル)という綱渡り、しかも開始後も想定していない現象が起き(掲載途中結果レポートが出ない等)、常に予断を許さない状況であったことを覚えている。
ちなみに、2012年現在では、AdWordsを通じてYouTubeへ掲載できる広告商品のバリエーションも増えており、様々な先進的なことにも取り組めるようになっているので、”古臭い”方法ではない使い方もできるようになっている。
2007年の参考情報
日本のインターネット広告費
6,003億円 (対前年比+65%)
*出典:電通「日本の広告費」
Google 年間売上高 (全世界の売上)
16,594百万ドル(対前年比+56%)
*出典:Google Investor Relations
主なニュース
*YouTube、ニコニコ動画など動画共有サービスが人気。後続も続々登場
*Windows Vista発売、「Windows Live」正式版もスタート
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出典:Internet Watch
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