横浜 三吉演芸場へ"南條隆一座とスーパー兄弟"の公演を観に行ってきた。
大衆演劇というジャンルに属するエンターテインメントであり、自分にとっては初めての体験であった。
大衆演劇で思いつくことと言えば、、梅沢富美男、東十条にある篠原演芸場(小さい頃、近くに住んでいたことがあるので)、一万円札で造った首輪のおひねり、、そして最近では北野武映画に出演した早乙女太一、といった断片的なものであるが、一言で言えば中高年女性向けの娯楽なので、自分には縁のないものだと思っていた。
今回、好奇心旺盛なごく身近な方から当日のお誘いを受けたのだが、自分だけ行かないわけにもいかず、、といった流れになり、ひょんなことから行くことになった。
(当日の三吉演芸場入口) ここをくぐると未知の世界への好奇心が少しずつわいてきました....
入口で料金2,200円を払い、舞台正面の一般席に座に客席を見渡してみたが、やはりお年を召された女性が多かった。お客さんの入りは良く、開園前にはほぼ満員になっていた。
今回の、南條隆一座とスーパー兄弟の公演。
予備知識が全く無い状態で観に行ったのだが、開演前に劇場をうろちょろしたりして幾つか分かったことがあった。
(開始前に分かったこと)
・公演は二部構成で、第一部はお芝居、第二部はグランドショー といった形式になっているらしい。
・5月1日から29日まで三吉演芸場で公演しており、芝居の演目は日替わりになっているらしい。
・この劇団には座長が二人いて、その名前は龍 美麗 と 南條 影虎 らしい。
そうこうするうちに、お芝居 "沓掛時次郎" がはじまった。
主役の時次郎を演じるのは龍 美麗。
”座長っ!”
の掛け声と共に颯爽と登場した彼は、精悍な二枚目であり、ストイックな役柄である時次郎を見事に演じていた。
約90分のお芝居であったが、ストーリーが面白いということだけでなく、役者の演技が素晴らしく、台詞まわしも魅力的で、飽きることなくあっという間に時が過ぎていった。
自分の前で観劇していたご婦人は、すっかり劇に感情移入して何度もタオルで目を拭っていたが、それほどまでに観客を芝居にひきこませる実力を持った役者ばかりであった。
"中高年女性向けの娯楽なので、自分には縁のないもの" なんていう先入観は、芝居の途中ですっかり吹き飛んでいた。
良い意味で期待を裏切られ、登場した役者に心からの拍手喝采!
素直に、おもしろかったです!
そして、第二部のグランドショー。
グランドショーというのは何だろう?
と思っていたのだが、はじまってみれば、歌謡曲にあわせて、約20人の劇団員のみなさまがひとりひとり踊りを披露する、ということが分かった。
これがもうサービス満点で、全役者さんたちがノンストップ・ローテーションで出演して、しかもひとりひとりがお色直しをして登場するというサービス精神に溢れていて素晴らしい。
昭和の演歌、歌謡曲もあれば、現代のジャニーズ、AVEX系もありというバリエーションの中で、役者が日舞的な踊りを披露するのですが、その独特の色気に満ちた目線とムーブがとにかく後をひくほど印象的。
これは、第二部グランドショーだけではなく、公演全体を通しての印象であるが、とにかく役者の方々、特に座長の二人の色気というのが半端ないのである。
色気という言葉は適切でないかもしれない 。
彼らは大衆演劇一座に生まれ、2、3歳で初舞台に立ち、幼いころから一座と共に日本各地を巡業し、全ての人生を芸能に捧げてきた "ナチュラルボーン役者" である。
そうした予備知識がなくても、彼ら役者がそういう人生をおくってきた人にしかだせないオーラ、色気をむんむんに放っているということを、目の前で観ればきっと感じることだろう。
例えていうなら、マイケルジャクソン。
彼は幼いころから、兄弟共々ショービジネスの世界だけで生きてきた人である。
一般人が体験するような世界を知らずに、自分の人生をエンターテインメントにひたすら捧げてきた。
だからこそ、ぽっと出の歌手とは一線を画した卓越した技術を持ち、エンターテイナーとしてのすさまじい色気をはなっていたと言えるのではないか。自分は、この龍 美麗 と 南條 影虎という二人の座長の演技と踊りを通じて、そうした感想を持ち、その一挙手一投足に大いに楽しませてもらいました。
第二部もたっぷり90分。 あわせて3時間の公演でしたが、このような素晴らしい技術をもったエンターテイナーの芝居とショーで2,200円というのは、とても安いと思う。
あるいは、この値段だからこそ、大衆演劇として歴史を築いてきたのかもしれない。
しかしながら、一つだけ言えるのは、
"2,200円以上のお金をとりながら、この劇団以上の エンターテインメントを提供しているものが、世の中にどれだけあるのだろうか?”
ということである。
中高年のご婦人だけのもの、とするには勿体ないくらい楽しいのが、 南條隆一座とスーパー兄弟のパフォーマンスでした。
また観に行ってみたいと思います。
ここでしか体験できない何かがあるから。
先入観を持たずに、ぜひ一度、彼らプロの役者のエンターテインメントをご覧になることをおすすめします。
(公演終了後) 出演者全員で客を見送ってくれます。本当は二人の座長と写真を撮りたかったのですが、なぜか遠慮してしまいました。